賃貸で原状回復の義務はどの程度あるの?新品同様にしなくてはダメ?

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ひとり暮らしをしている親族が、孤独死をしてしまった。
というケースは今や珍しくなくなりました。
しかし、困るのは遺族です。
孤独死してしまった人の部屋は、荒れている場合も少なくありません。
大家に高額な修繕費を請求された場合はどうすればよいのでしょうか?
そこで、今回は賃貸住宅を退去する際の原状回復義務についてご説明します。
「原状回復」とは、室内をどのような状態にまで戻せばよいのでしょうか?
興味がある方や親族が孤独死してしまい対応に困っているという方は、ぜひこの記事を読んでみてください。

目次

  1. 法律で定められている原状回復はどこまで?
  2. 孤独死が引き起こす問題とは?
  3. 遺族が大家に原状回復を求められたら?
  4. おわりに

1.法律で定められている原状回復はどこまで?

部屋を借りるとき、「退去の際は原状回復を行う」という条件で契約される方は多いです。
しかし、どんなにきれいに使っても人が住んでいる限り部屋は汚れるでしょう。
ですから、原状回復には限度があります。
(一社)全国賃貸不動産管理業協会のホームページによると、「賃借人が掃除を怠ったり不適切な部屋の使い方をした結果、傷ついたり汚れたりしたものは、回復の義務がある」ということです。
具体例をあげると

  • 掃除不足によるすすや油汚れ。
  • カビや腐食、水あか。
  • ペットがつけた傷や賃借人の不注意でつけた床の汚れや傷。

などは賃借人の負担できれいにしなくてはなりません。
逆に、「快適に暮らせるように掃除をしていたけれど、発生する汚れや傷」などは、原状回復をする必要はないのです。
例をあげると

  • 自然光によるたたみやカーペットの日焼け。
  • 家電を置いた際に発生する黒ずみ。
  • 設備の寿命で不調になったり壊れたりしたもの。

など。こうしてみると、ペット禁止の物件でペットを飼育していたり賃借人がひどい使い方をしたりしなければ、賃借人が負担することはあまりありません。
たとえ大家が請求しても、支払う義務はないのです。

2.孤独死が引き起こす問題とは?

では、賃貸物件で孤独死してしまった場合、どのような問題が起こるのでしょうか?
この項では、その一例をご紹介します。
遺族も大変ですが、大家にとっても頭の痛い問題が次々と発生するのです。

2-1.遺体の跡や臭いの問題

部屋の住人が孤独死してしまった場合でも、すぐに発見されればそれほど問題はありません。
しかし、臭いや虫が発生するまで気づいてもらえないと、遺体はひどい状態になっています。
発見後、遺体は警察が運び出してくれますが跡や臭いはそのままです。
換気をしたくらいではとても消えません。
また、夏場や冬場でも暖房器具を使っていた場合は腐敗の進行が早くなるので、早いうちに発見されても臭いや跡が残ることもあります。

2-2.遺品の問題

故人が使っていた家具や家電は、大家が勝手に処分できません。
持ち主は亡くなっていますから保証人や遺族の許可が必要です。
また、孤独死をするような暮らしをしていた方は部屋が荒れていることも多いでしょう。
中には、ゴミが部屋を埋めつくしているケースもあります。
残された遺品が多いほど、撤去費用もかかるでしょう。

2-3.風評被害の問題

現在は、自宅で人が亡くなることはほとんどありません。
ですから、「人が亡くなった部屋」というだけで、借り手がつかなくなることも珍しくないのです。
また、大家は「告知義務」があるため、新たな賃借人に人が亡くなっていることを説明しなければなりません。
ですから、借り手を見つけるために家賃を大幅に値下げするケースもあります。

3.遺族が原状回復を大家に求められたら?

住人が孤独死をした場合、大家はまず保証人と連絡を取ります。
保証人が原状回復をしてくれれば、それが一番でしょう。
しかし、保証人が原状回復する能力がなかった場合、遺族に連絡が行きます。
その場合はどうしたらよいのでしょうか?

3-1.遺族が原状回復をする場合

遺族が原状回復をすると決めた場合、まずは大家と話し合いをしましょう。
床や壁紙の張り替えや、風呂がまなどの設備の交換まで求められるかもしれません。
しかし、すべての要求をのむ必要はないのです。
遺族が行わなくてはならないことは、遺品の撤去と遺体の臭いや跡を消す費用の負担。
それ以外は、「経年による劣化」で大家側の負担になる可能性が高いです。
ただし、これは孤独死をした方が掃除や整理整頓をして部屋をきれいに使っていた場合の例。
部屋がゴミで埋もれており、その結果床が腐っていた場合は交換費用の負担義務が生じることもあります。
ですから、当人同士で話し合うよりは弁護士など法律の専門家に同席してもらった方がよいでしょう。
場合によっては、不動産会社が仲介に入ってくれることもあります。
遺族は「迷惑をかけた」という負い目がありますが、言われるままにお金を払い続ける必要もないのです。
法律家の立ち会いのもと、何に対してどのくらいの金額を払うのか決まったらそれを書面にしましょう。
そうすれば、後で追加請求などをされることもありません。

3-2.遺族が遺産を放棄する場合

故人が長期間疎遠(そえん)だったりつきあいがなかったりした親族だった場合は、「遺産を放棄しますから、好きに片付けてください」と言いたくもなるでしょう。
しかし、それでは大家の負担が重すぎます。
ですから、何とか少しでも負担させようとあの手この手を使ってくることもあるでしょう。
そのため「荷物の撤去くらいはしますよ」と妥協案を示した方が、自体がスムーズに動く場合もあります。
遺産を放棄する場合、遺産をもらったり売り払ったりしてはいけません。
しかし、明らかにゴミや不用品は処分しても大丈夫です。
でも、この遺産とゴミとの区別は微妙なケースもあるので、できれば法律家に相談しましょう。
故人に借金があった場合などは、不用意に部屋を片付けると言いがかりをつけられることがあります。
また、不用品を一度に処分したい場合は、不用品回収業者を利用しましょう。
有料ですが、不用品をまとめて引き取ってくれます。
最近は、遺品整理を手伝ってくれる業者も増えてきました。
ひとりでは片付けられない量の遺品がある場合は、片付けも一緒に行ってくれる業者に依頼するとよいでしょう。
遺品さえ片付ければ、大家側でリフォーム会社や掃除業者を手配できます。
片付けの最中に価値のある遺品が出てきた場合は、売却せずにトランクルームなどに一時保管しておいてください。
遺産を放棄したい人が売却することはできません。

4.おわりに

いかがでしたか?
今回は、部屋で親族が孤独死をしてしまった場合の原状回復について、ご説明しました。
まとめると

  • 原状回復とは、経年劣化したものなどは回復義務がない。
  • 故人が孤独死した場合、部屋の掃除と荷物の運び出しは遺族が行わなくてはならない。
  • その後の話は大家と法律家を交えて話し合おう。
  • 遺産を放棄する場合も、荷物の運び出しくらいは行うと喜ばれる。

ということです。
高齢化社会となった今は、ひとり暮らしをする高齢者も少なくありません。
もし、親や兄弟がひとり暮らしをしている場合は、定期的に連絡を取りましょう。
電気ポットを利用することで、遠く離れた人に生存を伝える装置も開発されています。
また、ひとり暮らしをしている方はいざというときに様子を見に来てくれる人を作っておきましょう。
今は、高齢者のひとり暮らしを安全に行えるようにいろいろな装置がついた賃貸物件もあります。
年をとってひとり暮らしをする場合は、できるだけ安否がすぐに確認できる物件を選びましょう。