生前整理の前に知っておきたい遺産相続に関する民法改正

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今年、27年ぶりに相続法が改正になりました。
法の施行は平成31年1月13日からとなりますが、遺品整理などを考える上で知っておいた方がよい事柄が多々あります。
平成30年7月6日に成立した「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」がそれにあたります。
配偶者の権利保護や相続をめぐる紛争防止の為の自筆証書遺言方式の緩和などが盛り込まれたものとなっています。

遺品整理を行う前には遺産の分割に関して取決めを行わなければ、その所有権を確定できずに形見分けや残った品物の処分を行うことができません。
遺書が残されていて、細かく指示がなされていない場合、相続人の間で協議を行い、遺産分割協議書を作成し遺品の所有権を定義する必要があります。
残された遺族の間でスムーズに事が運ばないといつまでたっても処理が行えないという事態も発生しえます。
今回の改正前の法律では、遺書に関しての法的な決め事が強すぎて一般の人が遺書をしたためるだけでは効力を発しえない構造がありました。
自筆遺言方式を緩和し生前に遺書を作成しておくことで、それらを回避しやすくするという意図があります。

さてその概要は下記のようになっています。

1.配偶者の居住権を保護するための方策について
2.遺産分割に関する見直し等
3.遺言制度に関する見直し
4.遺留分制度に関する見直し
5.相続の効力等に関する見直し
6.相続人以外の者の貢献を考慮するための方策

それでは、各項目を具体的に見てみましょう。

1.配偶者の居住権を保護するための方策について
配偶者の居住権保護を考え2つの方策

1)配偶者短期居住権
ア 居住建物について配偶者を含む共同相続人間で遺産の分割をすべき場合の規律
配偶者は,相続開始の時に被相続人所有の建物に無償で居住していた場合には,遺産分割によりその建物の帰属が確定するまでの間又は相続開始の時から6か月を経過する日のいずれか遅い日までの間,引き続き無償でその建物を使用するこ とができる。


イ 遺贈などにより配偶者以外の第三者が居住建物の所有権を取得した場合や,配偶者が相続放棄をした場合などア以外の場合,配偶者は,相続開始の時に被相続人所有の建物に無償で居住していた場合には,居住建物の所有権を取得した者は,いつでも配偶者に対し配偶者短期居住権の消滅の申入れをすることができるが,配偶者はその申入れを受けた日から6か月を経過するまでの間,引き続き無償でその建物を使用することができる。

2)配偶者居住権
  配偶者が相続開始時に居住していた被相続人の所有建物を対象として,終身又は一定期間,配偶者にその使用又は収益を認めることを内容とする法定の権利を新設し,遺産分割における選択肢の一つとして,配偶者に配偶者居住権を取得させることができることとするほか,被相続人が遺贈等によって配偶者に配偶者居住権を取得させることができることにする。

2.遺産分割に関する見直し等
1)配偶者保護のための方策(持戻し免除の意思表示の推定規定)
 持戻し免除の意思表示の推定規定の要点は,以下のとおりです。
(要点)
婚姻期間が20年以上である夫婦の一方配偶者が,他方配偶者に対し,その居住用建物又はその敷地(居住用不動産)を遺贈又は贈与した場合については,民法第903条第3項の持戻しの免除の意思表示があったものと推定し,遺産分割においては,原則として当該居住用不動産の持戻し計算を不要とする(当該居住用不動産の価額を特別受益として扱わずに計算をすることができる。)

2)仮払い制度等の創設・要件明確化
 仮払い制度等の創設・要件明確化については,大別すると,家事事件手続法の保全処分の要件を緩和する方策
(後記ア)と,家庭裁判所の判断を経ないで預貯金の払戻しを認める方策(後記イ)とに分かれます。 それぞれの方策の要点は,以下のとおりです。
(要点)
ア 家事事件手続法の保全処分の要件を緩和する方策
預貯金債権の仮分割の仮処分については,家事事件手続法第200条第2項の要件(事件の関係人の急迫の危険の防止の必要があること)を緩和することとし,家庭裁判所は,遺産の分割の審判又は調停の申立てがあった場合において,相続財産に属する債務の弁済,相続人の生活費の支弁その他の事情により遺産に属する預貯金債権を行使する必要があると認めるときは,他の共同相続人の利益を害しない限り,申立てにより,遺産に属する特定の預貯金債権の全部又は一部を仮に取得させることができることにする。

イ 家庭裁判所の判断を経ないで,預貯金の払戻しを認める方策
各共同相続人は,遺産に属する預貯金債権のうち,各口座ごとに以下の計算式で求められる額(ただし,同一の金融機関に対する権利行使は,法務省令で定める額を限度とする。)までについては,他の共同相続人の同意がなくても単独で払戻しをすることができる。

  【計算式】
単独で払戻しをすることができる額=(相続開始時の預貯金債権の額)×(3分の1)×(当該払戻しを求める共同相続人の法定相続分)

3)遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合の遺産の範囲
  遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合の遺産の範囲に関する規律の要点は,以下のとおりです。
(要点)
ア 遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても,共同相続人全員の同意により,当該処分された財産を遺産分割の対象に含めることができる。

イ 共同相続人の一人又は数人が遺産の分割前に遺産に属する財産の処分をした場合には,当該処分をした共同相続人については,アの同意を得ることを要しない。

3.遺言制度に関する見直し
1)自筆証書遺言の方式緩和
  自筆証書遺言の方式緩和の要点は,以下のとおりです。
(要点)
全文の自書を要求している現行の自筆証書遺言の方式を緩和し,自筆証書遺言に添付する財産目録については自書でなくてもよいものとする。ただし,財産目録の各頁に署名押印することを要する。
2)遺言執行者の権限の明確化等
遺言執行者の権限の明確化等の要点は,以下のとおりです。
(要点)
ア 遺言執行者の一般的な権限として,遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は相続人に対し直接にその効力を生ずることを明文化する。

イ 特定遺贈又は特定財産承継遺言(いわゆる相続させる旨の遺言のうち,遺産分割方法の指定として特定の財産の承継が定められたもの)がされた場合における遺言執行者の権限等を,明確化する。

4.遺留分制度に関する見直し
遺留分制度に関する見直しの要点は,以下のとおりです。
(要点)
(1)遺留分減殺請求権の行使によって当然に物権的効果が生ずるとされている現行法の規律を見直し,遺留分に関する権利の行使によって遺留分侵害額に相当する金銭債権が生ずることにする。
(2)遺留分権利者から金銭請求を受けた受遺者又は受贈者が,金銭を直ちには準備できない場合には,受遺者等は,裁判所に対し,金銭債務の全部又は一部の支払につき期限の許与を求めることができる。

5.相続の効力等に関する見直し
相続の効力等に関する見直しの要点は,以下のとおりです。
(要点)
特定財産承継遺言等により承継された財産については,登記等の対抗要件なくして第三者に対抗することができるとされている現行法の規律を見直し,法定相続分を超える部分の承継については,登記等の対抗要件を備えなければ第三者に対抗することができないことにする

6.相続人以外の者の貢献を考慮するための方策
相続人以外の者の貢献を考慮するための方策の要点は,以下のとおりです。
(要点)
相続人以外の被相続人の親族が,無償で被相続人の療養看護等を行った場合には,一定の要件の下で,相続人に対して金銭請求をすることができるようにする。

7.その他
 新旧対象表 http://www.moj.go.jp/content/001263585.pdf

民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律の施行期日
民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律の施行期日は,原則として,公布の日から1年以内に施行される(別途政令で指定します)こととされていますが,遺言書の方式緩和(前記3(1))については,平成31年1月13日から施行され,また,配偶者の居住の権利(前記1)については,公布の日から2年以内に施行される(別途政令で指定します)こととされています。