
遺産の対象になる動産とはどんなもの?遺産分割の方法とは?
2015/10/13
人が亡くなると多くの場合、遺産が発生します。
遺産には不動産と動産の2種類があるのです。
不動産は土地や建物など分かりやすいものですが、動産とはいったいどのようなものなのでしょう?
そこで、今回は遺産の対象になる動産についてご説明します。
動産の中には価値の特定が難しいものもあり、遺産分割の際にもめる原因になるケースもあるのです。
それを防ぐ方法の一例もご紹介しましょう。
そろそろ相続について考えておきたいという方は、ぜひこの記事を読んでみてくださいね。
目次
1.動産の定義とは?
動産とは、一言で説明すると「持ち運び可能な資産」です。
これに対し、不動産は「動かせない資産」になります。
つまり、不動産とは家と土地。
それ以外は、すべて動産になります。
持ち運び可能な資産というと、現金や有価証券をイメージする方が多いでしょう。
しかし、動産はそれだけではありません。
貴金属や家具、機械類、ブランド物、美術品、コレクターズアイテムなど、資産価値があるものはすべて動産になる可能性があるのです。
ですから、ものによっては遺産分割で争いの火種になることもあるでしょう。
また、動産はプラスの遺産だけではありません。
たとえば、大型家具がたくさん遺(のこ)されたが誰も引き取り手がなく処分した場合は、処分費用がかかります。
このようなものが、マイナスの遺産になるのです。
プラスの動産からマイナスの動産を引いた額が、相続対象になる動産になります。
2.動産と遺品の区別がつきにくいものとは?
この項では、動産と遺品の区別がつきにくい品をご紹介します。
該当する品を所持している方は、一度資産価値をはっきりさせた方がよいでしょう。
2-1.骨とう品や美術品
骨とう品や美術品は、価値が変動するものです。
また、本物といわれて購入したらにせものだった、ということも珍しくありません。
千円の品が百万円になることもありますし、その逆になることもあるでしょう。
ですから、不用意に形見分けをする前に美術商などに、価値を鑑定してもらうとよいですね。
多数の骨とう品を持っている方ならば、お付き合いのある骨とう商や美術商がいるでしょう。
2-2.コレクターズアイテム
世の中には、いろいろなコレクターがいます。
前述した骨とう品や美術品ならば、一目で「価値がありそう」と思われることが多いです。
しかし、おもちゃや生活雑貨などは、価値が分かりにくいことも少なくありません。
でも、古ぼけたおもちゃなどが驚くほどの高値で取り引されるケースも多いのです。
ですから、形見分けが終わった後で「実はあの品が高額で売れた」という話が広まり、もめごとが発生することもあるでしょう。価値が分かりにくいものをコレクションしている方は、現在の価値をわかりやすいように記しておくとよいですね。
2-3.古書
古書も、価値が変動する品物です。
特に、コミックは「初版本など、特定の品だけに価値がある」というものも少なくありません。
また、金銭的な価値だけではなく、学術的な価値も高いものもあるでしょう。
逆に、「買ったときは高価だったけれど、今は全く無価値」というものもあります。
古書を集めている方も、一度自分の持っている古書の価値を調べ、分かりやすい形で記載して残しておきましょう。
そうすれば、遺族も安心です。
2-4.ブランド物
ブランド物は、品物によって大きく価値が異なります。
洋服など流行(りゅうこう)があるものは、元値が高価でも資産価値はほとんどありません。
逆に、時計やアクセサリー、さらにカバン類の一部は価値があまり変わらないか、ヴィンテージものとして高値がつく場合もあります。
ですから、相続の前にブランド品を買い取る店に査定に出し、金額を確認した方がよいケースもあるのです。
3.動産を遺産分割する方法とは?
では、動産を遺産分割する場合はどのような方法があるのでしょうか?
この項では、その一例をご紹介します。
3-1.現物分割
現物分割は、動産をそのまま法律に従って分割する方法です。
遺言状がなく動産の価値がすべて判明している場合は、この方法が最ももめごとが起こりにくいでしょう。
自分たちで話し合いをしても構いませんし、法律家に立ち会ってもらう方法もあります。
また、遺言状が遺(のこ)されていた場合は、それに沿って現物分割をしましょう。
3-2.換価分割(かんかぶんかつ)
こちらは、動産を処分したお金を分割する方法です。
美術品などがたくさん遺(のこ)されたが、誰も興味がない場合などにこの方法が取られやすいでしょう。
処分費用がかかる動産がある場合は、処分費用を引いて分割します。
ただし、適正な価格で処分をしないと後でもめごとの原因になることもあるでしょう。
3-3.代償分割
こちらは、相続人のうち希望者が動産を相続し、残りの相続人が動産と同価値の現金を受け取る方法です。
遺(のこ)された動産の分割が難しい場合や、管理の仕方が面倒な場合、さらに動産に興味がある人が限られる場合に取られる方法になります。
事前に動産の価値を調べておけば、スムーズに分割が進むでしょう。
ただし、動産を相続した人に支払い能力がなければ、この方法は使えません。
4.故人の生前に相続した動産は、分割の対象外になる
故人がまだ生きているうちに、動産を相続するケースもあります。
一例をあげると、株券の名義を書き換えたり、コレクションを引き継いだりすること。
この場合は、生前贈与になりますので、分割の対象外になります。
ただし、受け継いだ動産の価値が高い場合は、遺(のこ)された動産を分割してもらえないこともあるでしょう。
また、進学費用や家の購入費用を援助してもらった場合、それが生前贈与とみなされることもあります。
生前贈与が原因で遺産分割の話し合いが進まない場合は、弁護士など法律家に相談してください。
5.価値が分かりにくい動産は、折を見て処分する方法もある
美術品などのコレクションをしている方は、ある程度の年齢になったら持ち物の行き先を考えましょう。
現金や有価証券は、価値が明確ですから遺産分割もしやすいです。
しかし、価値が分かりにくかったり、変化が激しかったりするものは遺(のこ)されるとトラブルの原因になる場合もあります。
そのため、相続人の中で価値が分かる人に生前贈与したり、同じものを集めているコレクターに譲ったりしましょう。
また、前述したように時価を調べて、分かりやすいように記録しておくと遺産分割のときの参考になります。
6.おわりに
いかがでしたか?今回は、遺産として動産が遺(のこ)された場合の対処法などをご紹介しました。
まとめると
- 動産とは土地と建物以外の価値がある遺品すべてを指す。
- 現金や有価証券以外にも、美術品やコレクターズアイテムなどが対象になる。
- 価値が分かりにくいものを、不用意に形見分けすると、もめごとの原因になる可能性がある。
- 遺産分割の方法にはいくつかの種類がある。
ということです。
人が亡くなると、いろいろと慌ただしくなります。
遺産分割にまでなかなか考えが回らない、ということもあるでしょう。
ですから、遺産分割は葬儀が終わり、ひと段落ついた後の方がお勧めです。
ただし、遺産放棄をした場合は故人の死から3か月後までに行わなくてはいけません。
それだけは覚えておきましょう。
また、高齢のコレクターが家族にいる場合は、コレクションの行き先についても話し合っておくとよいですね。